「2016年6月」の記事一覧

マルシャ・リネハンと蓮・スティンソン 「第三世代行動療法」

エンパワメント・センターの今年4月の特別企画「第三世代行動療法をあなたの日々の支援に活用する参加型研修」講師の蓮・スティンソン とマルシャ・リネハンのツーショット写真を下に転載しました。 受講された方々、リネハンの言葉「地獄から抜け出る唯一の道はアクセプタンス」覚えていますか? DBT弁証法的行動療法のバリデーション・スキルを日々の仕事で活用していますか? マインドフルネス、瞑想の練習をしていますか?   今、世界の最先端心理療法:第三世代行動療法は、従来の認知行動療法の限界を超えて、深刻なPTSD、BPD(境界性人格障害)などの治療に目覚ましい効果を発揮しています。マルシャ・リネハンはそのトップリーダーとしてあまりに有名。治療不可能と言われてきた境界性人格障害を完治させるプログラム「弁証法的行動療法」を開発し世界に広め、また瞑想を教える禅老師でもあります。 近年のNewYork Timesインタビューで、自らが十代にして重症の境界性人格障害を病み隔離病棟に入院していたことを初めて公にしました。完治を待たず退院したとき彼女は、ここに収容されている人々をいつか必ず解放すると誓ったとのこと。それから20余年後、リネハンはDBT弁証法的行動療法をもって、隔離された患者、自殺未遂を繰り返す人々に大きな希望をもたらしたのです。 4月の特別企画の参加者ほぼ全員が蓮スティンソン講師による研修第二弾の開催を熱望されたので、来年2017年4月の第一または第二の週末2日間で、「特別企画第二弾:第三世代行動療法をあなたの日々の支援に活用する参加型研修・アドバンス編」を開催予定です。 精神科医、弁護士、心理士、教師、介護士等々から学生、サバイバーも、実に多様な立場の人々が全国から集まったことが、4月の研修をとても豊かなものにしました。第二弾もどなたでも参加できます。今年参加できなかった方も内容をキャッチアップできるようにと講師に依頼しています。 案内は、会場が確保できる11月にエンパワメント・センターのホームページで発表します。今年と同じ大阪府高槻市で開催予定です。  

北海道小二少年生還のニュースからしつけと体罰について考える

北海道の山中で行方不明になった小学2年生の少年が、7日後無事に発見された。良かった。良かった。 すごい子どもだなあ。7日間ただ一人の人間にも会わず、山道や獣道を直線距離で5キロだからそれをはるかにまさる長距離を歩いて歩いて、決してあきらめずに、熊や夜の寒さから自分の身を守り通した。少年のサバイバルへの精神力は見事だ。 久しぶりのハッピーエンドの嬉しいニュース、と思っていたら、そうでもなかったようだ。私はTVは持たないので全く見ないし、新聞もネットで見るだけなので、この事件に関して世の中が、しつけの是非をめぐって大論争、少年の両親は大バッシングをうけていることを、BBCやCNNの国外ニュースで知った。  少年の生還を一緒に喜んであげたらいいのに。「しつけと体罰」の専門家としてもし私が何か言うとしたら、両親は少年と娘にも謝ること以外に、「体罰の6つの問題性」をこれを機会にじっくり考えてみてくださいと助言するぐらいだろうか。  たしかに懲らしめのために山中に7歳の子どもをたとえ10分間でも置き去りにするのはしつけではなく体罰だ。日本の大人の約6~7割が親による体罰はときには必要と考えている。(朝日新聞調査2004年 2010年)この「時には」というのが曲者で、体罰は絶対しないと考える大人が増えないと、体罰のみならず体罰の発展した深刻な身体的虐待を日本から減らすことはできない。     体罰が子どもの心と身体の健康な発達を妨げることは、たくさんの研究でとっくに明らかになっている。しない、させないとまず思って、親や教師はそれに代わる方法をいつもクリエイティブに情報収集してほしい。 体罰とは、殴る、蹴るなどの腕力を用いるものにとどまらない。子どもに恐怖感を与える対応は、すべて体罰と考えた方が良い。たとえば2歳の子を家のトイレに30分閉じ込めることはしつけではなく酷い体罰だ。その子は恐怖と不安を抱くからだ。それも親に見捨てられるという子どもにとっては最悪の恐怖。 わたしは常々「体罰の6つの問題性」を語り、体罰の子どもに与える深刻なダメージに人々の意識を喚起している。 <体罰の六つの問題性> 体罰は: 1、大人の感情のはけ口である 2、恐怖感を与えることで子どもの言動をコントロールする方法である 3、即効性があるので、他のしつけの方法がわからなくなる 4、しばしばエスカレートする 5、それを見ている他の子どもに深い心理的ダメージを与える 6、ときに、取り返しのつかない事故を引き起こす             出典 森田ゆり著「しつけと体罰」(童話館)    1.体罰は大人の感情をぶつけていることがほとんど。 少年が人や車に石をぶつけるのを制してもやめなかったとき、両親はこれは絶対に許してはならない行為と受け止めたことでしょう。と同時にいうことをきかない少年に腹が立ったに違いありません。特に、一度目、車から降ろして、後から追っかけてくるのを拾った後、車の中での少年の態度が反省的でなかったのかもしれません。親は強い怒りを刺激されたことが想像できます。8歳の子どもを山中に10分間置き去りにすることがどれだけの恐怖を子どもに与えることか、きっと通常だったら考え判断できることが、怒りの感情に圧倒されると、人は理性的な行動がとれなくなってしまうのです。 そんなときは、「自分は怒っている」と正直に自分の感情を認め受け入れることを心掛けていると、感情に支配されて行動してしまうことを避けることが可能になります。 「本気で怒っている」ことを、言葉で伝えるコミュニケーション・スキルを持ちましょう。こちらの言い方によって子どもは驚くほど協力的になることがあります。  2.体罰は恐怖感を与えることで子どもの言動をコントロールする方法 親が正しいと信じる方向へ子どもをガイドすることがしつけです。こわがらせて言うことをきかせるという方法=体罰を使っていると、子どもは怖くない人の言うことはきかなくなります。人に石を投げてはいけないという教えは、怖い人の前ではしないけれど、怖くない人にはしてしまいます。かげでいけないことをしたり、嘘をついたりするようになります。  3、体罰は即効性があるので、他のしつけの方法がわからなくなる 親や教師が、体罰は使わないと心に決めておくと、では、それ以外にどうしたらよいのかの情報に敏感になり、いろいろ試みるようになります。体罰以外のしつけの方法は、時間がかかることが多いです。すぐに言うことをきくようにならないかもしれません。しかしいのちを育てるとは、時間がかかる作業です。「待つ」ことでもあります。芽をだした野菜が健康に育つには、葉が増え、茎が伸び、花をさかせるという長い成長のプロセスを「待た」なければならないのと同じです。  4、体罰はしばしばエスカレートする 体罰は、このケースの場合もエスカレートしました。少年を一度車からおろして発車して、泣きながら追いかけてくるのを拾った。そこで子どもがちゃんと謝らなかったので親は怒りを更に募らせたのかもしれません。再び置き去りにして、今度は走り去ってしまうというところまでエスカレートしました。 おしおきのために親が4歳の子どものおしりを手で叩いたけれど、ちっとも怖がらないので、ベルトで打とうとした、それもかわされてしまい、ついに包丁を持ち出したケースがあります。体罰はエスカレートして、している大人が自分をコントロールできなくなるから危険なのです。 5.体罰はそれを見ている他の子どもに深い心理的ダメージを与える 少年の妹はこの7日間、どうして過ごしていたのでしょう。妹が7日間にわたって経験した不安と恐れは大変なものです。両親は、妹にも「こわい思いをさせてごめんね」ときっちりと謝ってください。このことで揺らいでしまった娘との親子の信頼のきずなを回復してください。 6、体罰はときに、取り返しのつかない事故を引き起こす 今回、体罰によって事故がおきてしまいました。でも最悪の事故ではなく、取り返しのつく事故だったことを心から喜びます。  体罰=恐怖で教えようとすることは、親子の信頼関係に大きなひびを入れます。子どもにとって最も大切な人である親がもたらす恐怖の体験は、他の人による恐怖よりはるかに大きなダメージとなります。 ご家族4人、一人一人が、起きた事柄を安心な場で話し合い、気持ちを表現しあってください。それが難しければ、カウンセラーの力をかりて家族会合を持ち、この出来事でご家族が今まで以上の信頼感で繋がれるようになることを祈ります。 なにはともあれ、大和クン。あなたは7日間山中をたった一人で生き延びたあきらめない生命力の強い人。人や車に石を投げるような弱虫のする遊びはもう終わりね。       ここに書いた体罰に変わるコミュニケーションの方法を「アサーティブネス」といいます。その研修が8月に大阪であります。  アサーティブ・コミュニケーションを自分のものにする<2日間> 8月20,21日 土日 大阪 浪速区民センター  講師:森田ゆり 申し込みは、http://empowerment-center.net/の研修の頁へ。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               申込み・問い合わせ:エンパワメント・センター   URL  http://empowerment-center.net/        

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