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子どもの虐待・DV・体罰・しつけ

虐待とDVが子どもに与える影響:対応のスキル研修 森田ゆり

「児童虐待、最多8.9万件 対象拡大 14年度対応」今年もこんな新聞見出しで、10月8日に、児童相談所の虐待対応件数が報道されました。 でも、みなさんは、「とどまるところを知らぬ日本の子育て状況の荒廃」などと言ったセンセーショナルに扱いたいマスコミの根拠のないリアクションに踊らされて世を憂えること、くれぐれも無いように。 虐待やDVの対応件数は、取り組みが進めば進むほど増加していきます。アメリカでも1960年代に取り組みが始まって、1990年代まではうなぎのぼりに上昇し続けましたが、その後、低下していきました。福祉、医療、保健、司法、教育、メディアのあらゆる分野での虐待対応の取り組みが進んだ一定の時期から減少し始めたのです。 日本は、今まだ試行錯誤しながら取り組みをすすめている最中です。その歩みは、米国のこの分野で仕事をしていたわたしの感覚では、あまりに緩慢ですが、虐待対応件数が毎年増加していることは、取り組みが進んでいることを示していると言えましょう。 ただし、日本では、厚労省が第一次予防、すなわち虐待の発見、通告、介入ばかりに力点を置いているために、初期対応件数は増加しても、家族へのケアが予算的にも、人員的にも、資源が少なすぎ、追い付いていきません。 それどころか、児童相談所では、通告の多さに振り回されて、親、家族への対応に今まで以上に手が回らなくなっている現状です。この現状をどう打開するのか、わたしも司法や福祉の研究者らと論議を重ねながら模索しています。 虐待する親の回復支援プログラム「MY TREEペアレンツプログラム」の実践は、今年で14年目になります。主催してくれる全国の児童相談所の数は思うように増えませんが、自分を変えたいと苦闘する親たちと深く関わる実践は、虐待という問題に対していつも希望を与えてくれます。 11月と12月の研修では、それぞれが自分のいる場で何をどうしていけるのかを学びます。わたしの研修には、福祉、医療、教育、司法の現場にいる方、研究者、そして当事者、学生、親、時には高校生も参加されます。参加者全員一人一人が安心して最大限の学べる場を提供することが、トレーナー・キャリア30年のわたしの自負です。 子育て、しつけと体罰、子ども虐待とDVについて、新しい視点、人権を基盤にしたゆるがない理解、最新の知識、そして全国から来られるさまざまな立場の参加者との意見交換を体験してください。この2つの研修も20年間続けてきたテーマですが、内容はいつもパワーアップしています。友人、同僚、知人も誘っていらしてください。 各研修の申込方法・申込用紙等は、下記ページをご覧ください。 http://www.9.zaq.jp/empowerment_center/1129and1219/1129and1219.html  

「児童虐待防止法の改正を準備する会」会報第5号

「児童虐待防止法の改正を準備する会」会報第5号 (2002年10月31日)より転載 森田 ゆり(エンパワメント・センター主宰) いち いちってね つまりぼくがね いちなのさ ぼくは せかいで ひとりきり いちってね つまりママがね いちなのさ ママは せかいで ひとりきり いちってね つまりきみもね いちなのさ ぼくと きみとで 2になるよ いちってね だけどちきゅうは ひとつなの ぼくと きみとで てをつなぐ いちってね だからはじめの かずなのさ ちいさいようで おおきいな 谷川 俊太郎「誰もしらない」(国士社)より   2000年6月に成立した「児童虐待の防止などに関する法律」は、保護者から子への暴力を禁じる法律が日本で初めて成立したという歴史的意義において画期的なものでした。しかし子どもへの虐待件数を減らすためには、あまりにも不十分な法律です。 現場にいる人々の虐待ケースへのさまざまな努力と工夫を、その場限りの対処法に終わらせるのではなく、虐待問題の抜本的解決という目標に向けた貴重なひとつひとつの成果として積み上げていくためには、効力のある法的枠組みを整備することが不可欠です。その枠組みを作るためにも、わたしたちは児童虐待防止法および児童福祉法の改正を求めます。 あなたという「いち」とわたしという「いち」とが出会い、またべつの「いち」と出会い、そんな無数の出会いの連鎖こそが、社会の問題を解決し現状を変えていく原動力です。 来る12月13日(金)夕方に、東京日比谷で全国の子どもの福祉にかかわる人々や市民や当事者が集まり、「子どもの虐待死を悼み、命を讃える市民集会・パレード」を大々的に行います。5千人以上の参加を予想しています。同封のパンフをご覧になり、是非このような動きが起きていることを、周りの人に伝えて下さい。本会の代表森田が12,13集会の実行委員長を務めています。そこでまたたくさんの出会いを得ることができるでしょう。12月に日々谷公会堂でお会いしましょう。   もくじ 会員に聴く:インタビュー「児童虐待防止法の改正に望む」…………………………………2      野口 啓示、 白山 真知子、 田中 優子、 飯島 成昭、 森田 ゆり 今の虐待防止法の一番だめなとこは? ~夏休み長女と話したこと~ 山根 若子………7 ちいさなあのこ、巨大ないのち  松尾 理恵子………………………………………………8 国会でCAP子どもワークショップ  森田 ゆり……………………………………………8 国会議員が安心、自信、自由 ~歴史的瞬間に立ち会って~ ……………………………12 会費納入のお願い…………………………………………………………………………………12   会員に聴く:インタビュー「児童虐待防止法の改正に望む」 児童虐待防止法が施行されて2年が過ぎようとしています。いよいよ改正に向けて動く時です。そこで今回、児童福祉の第一線で子どもと関わっている会員の方に、法律の施行をどのようにとらえているか、改正に何を望むかをお聴きしました。   神戸少年の町 指導員・野口 啓示さん Q:簡単に自己紹介をお願いします。 野口:関西学院大学大学院社会福祉学科を卒業後、米ワシントン大学に留学し、その後“神戸少年 の町“に指導員として勤務するようになってから4年になります。   Q:“神戸少年の町”って珍しい名前ですが、どういうところですか? 野口:児童養護施設です。現在児童養護施設に70名、乳児院に20名がいます(定員一杯だそうです)。2年前からグループ・ホーム制を実施しています。10人ずつに別れて生活し、食事、入浴なども少人数で行っています。従来の大人数の生活では、どうしても大ざっぱになりやすく、少しでも家庭的な雰囲気をという子どものケアの観点からグループ・ホーム制をとっています。これにより職員の負担は以前にも増して重くなる面もありますが、グループ・ホーム制は順調だと思います。 “神戸少年の町”というのは、米で1917年に設立されたボーイズ・タウンからきてるんですよ。 フラナガン神父の夢を追いかけるという熱い思いが職員にはあって、英語名は“KOBE BOYS TOWN“っていいます。 それから、3年前から、虐待ハイリスクの親への指導の取り組みを行っています。虐待してしまう親を見ていると、本当にどうして良いかわからない、子どもへの対応のスキル不足を感じるからです。 何とか、こんなことも、あんなことも出きると具体的に伝えることができないか、との思いからです。(最近教科書を出されたそうです。「親の目、子の目」BNN新社)   Q:今、一番大変な事は? 野口:とにかく職員の定員不足です。子どもへのケアは不十分になりますし、職員には残業を強要してしまう事になり、泊まりも多いです。今、子どもは一人ひとりがとても大変です。難しい問題を抱えている子どもも多く、大人の関心が必要です。私たちがよく使う言葉に「ちょっと、待って」と言うのがあります。 目の前の子どものニーズがわかるのに、それに応えて上げられずに、「ちょっと、待って」。とても辛いし疲れる事です。思いがあるのにできないのは燃え尽きの原因です。 それから、親のケアの問題があります。私たちは子どもと関わっている訳ですから、親とはできるだけ対立したくはありません。でも親の中には精神科領域の人がいる場合もあります。また、児相のケースワーカーの人数不足から、養護施設が関わらざるを得ない時もありますが、人数的にも親の対応は難しい。神戸少年の町には家庭支援センターと言うのがあって、虐待後のアフターケアも望めるので、まだ恵まれているほうだと思いますが…  ・・・

ハワイにて 「Tu Tu House」

森田ゆり・ハワイにて 「Tu Tu House」

わたしは、この1年半、ハワイ島の北部、ワイメアという人口九千人ほどの小さな町に住んでいます。鯨がやってくるビーチまで車で10分ですが、ハワイ諸島最高峰のマウナケア火山の裾野にあるので標高815m。朝夕は肌寒く、暖炉を備えている家も少なくありません。満天の星空が美しく、毎日虹が出ます。特に私の家の上には一日おきに大きな虹がかかります。 この町にNPO法人「Tu Tu House」があります。週に6日、朝から夜まで、さまざまなワークショップやクラスが開かれています。5つの異なったタイプのヨガクラス、フィットネス、気功、マッサージ、瞑想クラス、がん患者サポートグループ、死を考えるセミナー、出産準備クラス、慢性病の予防、等々の健康、医療関連だけでなく、iPadの使い方、水彩画、エッセー執筆クラブ、ハワイアンキルト、編み物、ウクレレクラスから、なんと花札クラブまであるのです。そのほかに、子どものための科学実験クラスや、楽器を持ち寄って音楽作りを楽しむ会、自閉症を考える会。毎月更新されるスケジュールはプログラムで満載です。     どのクラスも参加費は無料。教える人もボランティア無料で教えます。でもクラス内容のクオリティはとても高く、講師たちもそれぞれの分野の一線で活躍してきた、あるいは今活躍中の人ばかり。   誰も知り合いがいなかったこの町に来て、わたしはTuTu House のおかげで、素晴らしい友人たちに出会うことができました。朝8時からフィットネスクラスでダンベル体操とズンバで汗をかき、午前中はヒーリングヨガのクラスを教え、夜は音楽作りワークショップのイントロとして笑いヨガを教えたりしているのです。最近は編み物クラブに入って、病院で生まれた新生児にあげる帽子を編んでいます。15人ほどの女性ばかりのこのグループ、編み物しながらありとあらゆるおしゃべりに花を咲かせます。ハワイではトークストーリーと呼ばれる伝統です。 杖をつきながらも車を運転してくる85歳のYさんは「わたしはね、編み物なんて大嫌いなのさ。このグループに4年も通って完成させたのは15個の赤ちゃん帽子と、マフラーひとつだけ。でも、ここでみんなのおしゃべりに仲間入りするのが楽しくてやめられないってわけよ」 丁寧にわたしに編み方を教えてくれたRおばさん。「20年前に最初の夫と離婚した後、わたしと娘は同じ頃に妊娠したんだけれど、実は、どっちもその頃のわたしのボーイフレンドが父親だったの」なんてすごい話を、大きな声であっけらかんと話すので「え、それってジョーク?」と耳を疑ってしまった。 グループで一番若いSさんは、庭に30匹のウサギを飼っていて、そのウサギの毛を紡いで手創りのアフガン毛糸を作り観光客向けに販売している。ヤギも飼っていてカシミア毛糸も作っている。彼女の編んでいるセーターは見るからに超高級で、とてもいいビジネスになっているらしい。 TuTuとはハワイ語で、おばあちゃん、おじいちゃん。高齢の方という意味。ハワイの言葉は一つの語にたくさんの意味が伴なうので、長年の叡智といった意味もあります。 TuTu Houseにとって、オハナ(ハワイ語で家族の意味)は最も大切な概念です。拡大家族、コミュニティーのこともオハナと呼びます。叡智やスキルを受ける人も与える人も無料でする、というのもオハナだからこその大切な方針です。 児童虐待の分野で、わたしは家族えん会議という問題解決の方法をエンパワメント・センターの研修で数年間教えていましたが、ハワイではオハナ会議と呼んで、行政の介入のあったケースにも実施していて、効果をあげています。(そのことは「責任と癒し~修復的正義の実践ガイド~」築地書館で紹介しました。) わたしのヨガクラスも、85歳の男性老人、妊婦、関節炎で指が曲がらない人、太りすぎで立ってヨガができない人から、ヨガ歴10年のベテランまで、多様な年代の様々な人種の人と一緒にオハナのスピリットでするのが一番です。一人ひとりの身体のニーズをキャッチして、教えるというのは、エンパワメント・センターでやってきた参加型研修で最も力量を求められることでしたが、ヨガでもそれができるようになることがわたしの当面の目標です。   昨日、最初のベイビーハットを編み終えました。どんな赤ちゃんがこの帽子をかぶってくれるのだろうと想像しながら編むことは、心わくわくする体験でした。 編みながら「オハナ・プロジェクト:乳児院の赤ちゃんにあなたの手編みの帽子を贈りましょう」を日本で立ち上げようと思い立ちました。 日本では虐待、ネグレクト、遺棄された3歳以下の赤ちゃんは乳児院に措置されます。 現在全国に120の乳児院があり、約3000人の乳幼児が入所していて、その内の約400人は新生児です。多くの諸外国では、とりわけ乳幼児は養育者との継続的な愛着関係が発達に不可欠なため、施設ではなく、里親が家族的環境で育てる児童福祉政策をとっていますが、日本では今もって、乳幼児はかつての孤児院である乳児院で育てられています。乳児院でも小規模化や職員の担当する児童数を減らす配置基準の見直しや給与保障などを緊急課題として厚労省への働きかけをしていますが、改革はなかなか進みません。 この3000人の赤ちゃんにあなたの手編みの帽子を贈りませんか。初めて編んだ私ですら、トータル3時間で作れました。編み物の得意な人は、30分ぐらいで編んでしまうでしょう。 あなたのオハナスピリットを乳児院の赤ちゃんとワーカーさんに贈るだけでなく、多くの人に子ども虐待問題に関心をもってもらい、乳児が継続的愛着関係の中で育つように、社会的養護の制度の充実化の必要を訴えることも目的の一つです。 今年の夏ごろまでにプロジェクトをスタートさせる準備をして、9月に名古屋で開催されるInternational Society for Prevention of Child Abuse and Neglect子どもの虐待、ネグレクト防止学会世界大会で広く提案する予定です。 4月26日のエンパワメント・センターの「気持ちの本を使った気持ちワークショップ研修」では、内容に重なるところが多いテーマなので、このプロジェクトの詳細を紹介します。   4月以降の研修の申し込みはhttp://www.9.zaq.jp/empowerment_center/

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