「児童虐待防止法の改正を準備する会」への呼びかけ

2000年5月に児童虐待の防止等に関する法律が成立しました。 虐待防止のためには不十分な児童福祉法の改正が叫ばれ続けてきて10年弱、ようやく日本で初めて児童虐待を定義し禁じる法律が制定されたのです。

しかし立法のプロセスで論議された多くの最重要課題は法制化に至らず、残念なことにこの法律は制定されると同時に改正を視野に入れた論議をしなければならなくなりました。法律の最後には「三年後のみなおし」が付記されました。

新法は虐待禁止を初めて明文化したこと、虐待の被害者、加害者への行政レベルでの援助が不可欠であるという現実を受けとめている点では評価できますが、すでに実施されている取り組みに対しての指針を述べたに過ぎない点が多く、被虐待児およびその家族への援助が困難をきわめる問題点を抜本的に解決するための法的バックアップとなる部分は多くありません。

子どもの人権擁護の視点がこの法律の中で明文化されなかったことは残念でなりません。

また一時的な親子分離、虐待者へのケア受講命令、家族再統合の基準設定を可能にする裁判所の関与は、立法の過程では論議されたにもかかわらず、新法ではいっさい触れられませんでした。虐待をした親の親権を国が一時預かりする措置を裁判所の迅速な対応で可能にする法制化は、被虐待児へのケア、親へのケアを実現するために不可欠です。

民法の改正や裁判所の迅速な対応を法制化するためには省庁との折衝も必要となり時間がかかります。今から実践現場にいる人々の動きを作らなければ、また時間切れとなり法改正は現場のニーズからかけ離れたものとなってしまうでしょう。

参議院共生社会に関する調査会では児童虐待防止のための調査を続けてきました。衆議院の国会議員の中にも、虐待防止法改正に尽力する意志を明らかにしている人々がいます。これらの国会議員達と連携して法改正を準備していくためには、彼らに現場の声を届け、法律施行後の状況を知らせ、関連省庁への働きかけをしてもらう後押しをすることです。この法律の成立過程での大きな反省は、現場の声を議員に届けるロビー活動をする市民の会の存在がなかったということです。

私たちは新法を120パーセント活用して虐待防止、介入、ケアの仕事に取り組むと同時に、法の改正にむけて虐待問題に関る多くの人々の声を集めて追加訂正条文の準備を進めていく市民の会の必要性を痛感し、「児童虐待防止法の改正を準備する会」への参加を呼びかけます。

子ども虐待の防止、介入、治療、研究の諸分野。児童相談所、福祉事務所、養護施設、自立支援施設、医療、保健、教育、法律、市民活動。さまざまな分野で虐待という困難な問題に従事するあなたの声を国会へ届けようではありませんか。今度こそ子どもの立場を最優先し、そして現場のニーズを最優先した法律の改正を実現させようではありませんか。

一人でも多くの方の声と協力を期待しています。

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