「一億総活躍社会」と相模原殺傷事件に相通じる多様性を認めないメンタリティ

2017年2月8日

「一億総活躍社会」と相模原殺傷事件に相通じる多様性を認めないメンタリティ

森田ゆり

「女性が輝く一億総活躍社会」のキャッチフレーズ華々しく、2015年以来首相官邸の下に一億総活躍国民会議が設置され「ニッポン一億総活躍プラン」が閣議決定された。しかし「一億総活躍」とはなんとも嫌な言葉です。

すべての日本人誰もが活躍しなくていいじゃないですか。バリバリ仕事して活躍したい人、したくない人。生命力を外に向けて放出したい時期、内に向けて凝縮させたい時期。マイペースでいいのではないですか。多様でいいのです。そんなにいつも頑張って、活躍しなくていいのです。「ご活躍ですね」とか声かけられて、わたしはうれしかったことは一度もありません。 

女性が輝く一億総活躍社会って、一見、女性に寄り添った政策のように聞こえるけれど、アベノミクスへの批判をかわすための新たなスローガンとしか思えない。その女性政策の実態とは、少子化による労働人口の減少に対応するため、女性たちを非正規雇用の低賃金労働の担い手として駆り出すための様々な方策。まさに戦争中の一億総動員社会と同じです。

戦後は「一億総懺悔」、「一億層中流化」と、いつまでこの国は「一億いっしょ」でいたいんだろうか。「違い」は「間違い」、みんな同じで安心安全、のホモジニアス神話から抜け出すことができなくて、わたしたちの国は、21世紀になっても多様性を受け入れることが困難なのです。

 

「一億総活躍社会」とのスローガンを国の目玉方針として掲げるから相模原障害者施設の殺傷事件が起きる。あの事件の加害者は、重度の障がい者は生きている価値が無いと主張し、衆議院議長と安倍首相宛に直訴した上で、障がいの重度な人を選んで19人殺し26人に傷害を負わせた。戦後最大の殺傷事件です。そして優生思想犯罪です。優性思想の持主がおしなべて自尊感情の低さに苦しんでいる人物であるように、彼もまた低賃金で重労働の障害者介護に従事する自分の活躍度の不全感にさいなまれていたのに違いありません。

あの施設の中の人々は一生活躍することはありません。一億総活躍社会には決して入れない人々です。しかし、たとえ社会や経済に貢献することがなくても、彼らの命は一つ一つみな輝いている。いのちの輝きとは活躍することではない。人の命はただ存在するだけで尊い。そのことを理念としてではなく、心から共感できる人々を増やしていくことこそが、多様性ダイバーシティの推進である。

 「多様性とは、人は皆その価値において等しく尊いという人権概念を核にして、さらに人は皆違うからこそ尊いとの認識に立つ考え方である。」(「多様性トレーニングガイド」森田ゆり著 解放出版)より

 

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